息子が小学2年生のとき、担任の先生と個別面談をすることになりました。
学習の進み具合や、教室での様子、友だちとの関わり方。
ひと通り話したあと、
担任の先生が少し言いにくそうに話してくれたことがあります。
「市川くんのために、
個別の教育支援計画をつくってみませんか?
学校での様子を今後の進級・進学で引き継いでいくための資料なのですが・・・」
当時の私は、正直よく分かっていませんでした。
・何か診断が必要なの?
・作るとどうなるの?
頭の中は「?」だらけ。
でも今振り返ると、
あのとき先生が勧めてくれたのは、
子どもを守り、
学校生活を少し楽にするための仕組み
だったんだなと思います。
個別の教育支援計画とは?

どんなことを書く計画書?
個別の教育支援計画とは、
- その子の得意なこと
- 苦手なこと
- 学校で困りやすい場面
- どんな配慮や工夫があると学びやすいか
こうしたことを、学校と家庭で共有するための計画書です。
「支援=特別なこと」ではない理由
「支援」と聞くと、特別なことのように感じるかもしれませんが、 実際はとてもシンプル。
その子が安心して学校生活を送るために、
まわりの大人が同じ方向を向くためのメモ
そんなイメージが近いかもしれません。
※小学校で作成された個別の教育支援計画は、保護者も内容を確認し、必要に応じて中学校へ引き継ぐことができます。一方、小学校から中学校へ必ず引き継がれる「指導要録」は、保護者が内容に介入することはできません。
個別の教育支援計画は誰でも作れる?通常級でも可能?

作成が基本となるケース
個別の教育支援計画は、
- 特別支援学校
- 特別支援学級
- 通級による指導
を利用している児童生徒には、原則として作成されます。
通常級で作る場合
一方で、
- 落ち着きにくい
- 書くことが極端に苦手
- 指示を聞き漏らしやすい
- 集団行動がしんどそう
といった「気になること」がある場合、通常級でも作成が可能です。
学校から提案されることもあれば、 保護者から相談して作るケースもあります。
私自身が誤解していたのは、
困りごとがある=進路を考え直さなければならない
というイメージでした。
でも実際は、そんな戸惑うようなことではなかったんですよね。
私が当時、よく分からなかった理由
正直に言うと、
- 書類の名前が難しそう
- 説明を聞いてもピンとこない
- 周りのママ友もよく知らない
そんな状態でした。
しかも「支援計画」という言葉に、 どこかレッテルを貼られるような怖さもありました。
当時は、 「不登校」「発達障害」という言葉も今ほど一般的ではなく、 先生の説明も言葉を選んでいたのか、あいまいだった印象があります。
個別の教育支援計画に書かれる主な内容
各自治体のホームページには、 フォーマット例が掲載されていることが多いです。
学校側が子どものどんなところを見ているのか、参考にしてみてください。
<個別の教育支援計画の主な記載例>
◇本人の様子・特性
◇得意なこと・苦手なこと
◇困りやすい場面
◇学校での配慮・支援内容
◇家庭との連携
◇見直し時期
など
ライフサポートファイルとは?
ライフサポートファイルの役割
個別の教育支援計画とあわせて、 ライフサポートファイルと呼ばれるサポート資料があります。
※補足:
「ライフサポートファイル」という名称は千葉県や市町村でよく使われていますが、全国的に統一された名前ではありません。各自治体、地域ごとに名称が異なります。
これは、
- 幼稚園・保育園
- 小学校
- 中学校
- 高校・その先
と、成長に合わせて 支援や配慮の情報を引き継いでいくためのファイルです。
保護者が主体で作る
これは、親が主体となって記入するものです。
各自治体のHPでダウンロードできるところが多くあります。
また、決まった書き方を必ず守らなければならないものではなく、
- 必要なところだけ書く
- 空欄があっても問題ない
- ノートやファイルを使って自分なりに作る
といった形で、 保護者が自分で作成・管理できるものでもあります。
ライフサポートファイルと個別の教育支援計画の違い

この2つは、似た言葉で混同されやすいのですが、 役割は少し違います。
個別の教育支援計画の特徴
個別の教育支援計画は、
- 主に「学校生活」に焦点を当てたもの
- その学年・その時期の困りごとや配慮を整理する
- 担任や学校と共有するための計画
- 学校が中心になって作成する(保護者と一緒に)
個別の教育支援計画= 「今の学校生活を支えるための、学校主体の計画」
ライフサポートファイルの特徴
一方で、ライフサポートファイルは、
- 学校だけでなく、生活全体を見据えたもの
- 成長や環境の変化にあわせて積み重ねていく
- 「その子のこれまで」を引き継ぐための記録
- 保護者が主体となって管理・活用することが多い
ライフサポートファイル= 「これまでと、これからをつなぐための、家庭主体のファイル」
あのとき作らなかった私だから伝えたいこと

なぜ作らなかったのか
正直に言うと、わが家はそのとき個別の教育支援計画を作りませんでした。
理由はいくつかあります。
- まだ大丈夫だと思いたかった
- そこまで深刻じゃないと思いたかった
- 「支援」という言葉から目を背けたかった
当時の自分の気持ちを振り返ると、今ならよく分かります。
どこかで、
「知らなければ悩まなくてすむ」
と思っていたのかもしれません。
作らなかったことで気づいたこと
でも今振り返ると、発達特性のある子どもが困る場面は、想像以上に多く、成長過程で変化することにも気づきます。
息子が小学生だった当時は、ライフサポートファイルという仕組み自体が、まだ全国的に広く知られていない時代だったようです。
子どもの困りごとは次々と変わるので、後になって「当時はどうだったかな?」と振り返ろうとしても、整理するのは大変!
※息子の発達特性や病院受診までの経緯については、こちらの記事で詳しく書いています。
今だから伝えたいこと
だからこそ、
成長の過程や困りごとの変化を見える化した記録は、子どもの進路の大切な支えになる
のだと感じます。
「まだ必要ないかも」と思っていても、存在を知っているだけで安心につながりますし、必要になったときにスムーズに動けます。
文部科学省が公開している参考資料や日本の各自治体のHPを見ていると、様々なサポートが増えたんだなと感じました。
フォーマットを見て、書き方や項目の参考にする。
ノートや簡単なファイルで自分の家庭に合った形で調整する。
子どもの困りごとを観察をする
という意味でも参考になるのでは?と思いました。
知人から聞いた、作ってよかったという話
その後、同じように発達凸凹のある子を育てる知人たちから、 個別の教育支援計画やライフサポートファイルを作った話を聞くようになりました。
印象的だったのは、こんな声です。
- 先生が変わっても、子どもの特性を一から説明しなくてよかった
- 「困っていること」を感情ではなく、言葉で伝えやすくなった
- 親自身の気持ちや考えが整理された
中でも「なるほど~」と思ったことが、

作ったから特別扱いされた、というより 余計な誤解が減った
という話でした。
知らなかったからこそ伝えたいこと
私自身、当時は制度のことも、言葉の意味も、 ほとんど分かっていませんでした。
だからこそ、
- 知らないまま不安になる
- 誰にも聞けずに抱え込む
そんな保護者の気持ちがよく分かります。
個別の教育支援計画も、ライフサポートファイルも、 子どもが学校で少しでも安心して過ごすための、 選択肢のひとつです。
もし今、 先生から似たような話をされて戸惑っている方がいたら、
「知らないから不安になっているだけかもしれない」
そう思ってもらえたらうれしいです。
※この記事は、わが家の体験をもとに書いています。 制度の運用や名称は自治体・学校によって異なる場合があります。 気になる場合は、担任や学校、教育委員会に確認してください。




